シンポジウム・会議

公募について http://www.mext.go.jp/
https://www.jsps.go.jp/j-grantsinaid/
http://shushoku-signal.umin.jp/

第1回公開シンポジウムのご報告
〜「数理シグナル」学術領域の創出〜

領域代表 武川睦寛



シンポジウム会場となった東京大学医科学研究所・付属病院棟

 2月11日、東京大学医科学研究所にて、新学術領域研究「数理シグナル」研究班による第一回公開シンポジウムを開催致しました。本シンポジウムでは、講演者として領域内から井上純一郎先生、鈴木貴先生、尾山大明先生、武川の4名に加え、領域外から岩見真吾先生(九州大学)、倉田博之先生(九州工業大学)に招待講演をお願いし、数理科学的手法を活用した生命現象および疾患発症機構の研究について最新の成果をご発表頂きました。

 まず始めに武川が本領域の概要を説明し、その後、計画班員(井上先生、武川、鈴木先生)による講演が行われました。コーヒーブレイクを挟み、後半は岩見先生、倉田先生、尾山先生にご講演頂きました。



シンポジウム風景。各講演後には多数の質疑応答が行われました。


井上 純一郎 先生(東京大学)
「1細胞イメージングによる非古典的NF-κB活性化経路のダイナミクス」

井上先生は生体機能の調節に重要なNF-κB経路を中心に研究を展開されており、この経路で機能する転写因子の時空間的ダイナミクスについて発表されました。非古典的NF-κB経路により活性化する転写因子の細胞内局在が周期的に変化(振動)することを見出すと共に、その動的挙動がNF-κB経路を介した生理機能の調節に重要であることを示されました。


武川 睦寛(東京大学)
「MAPKシグナルおよびストレス顆粒形成による細胞機能の制御と疾患」

MAPK経路が関与する生体機能調節機構および疾患発症機構に関して、特にERK経路の異常活性化に伴って発現量が変化する癌シグネチャー遺伝子の同定とその機能について発表しました。また、ストレス応答MAPK経路の活性を制御する細胞内構造体「ストレス顆粒」の形成機構と、その数理シミュレーションについて紹介しました。


鈴木 貴 先生(大阪大学)
「シグナル伝達の数理モデリング - 減衰振動とリン酸化」

鈴木先生は細胞内シグナル伝達による生命動態制御を、数理モデリングを通して定量的に理解し、予測することに取り組んでおられます。本講演では、新たに構築されたNF-κBによる転写活性制御モデルを紹介され、その減衰振動が、Hoffmannモデルの数値シミュレーション解析により、数学的に説明できることを最新のデータを交えて示されました。


特別講演
岩見 真吾 先生(九州大学)
「数理科学的手法を駆使したウィルス学研究」

岩見先生は数理科学的手法を駆使した臨床および実験データの定量的解析を専門としておられます。本講演では、ウイルス感染に関する生物学的データを基に数理モデル構築、コンピュータシミュレーション、および統計学的手法を用いて定量解析を実施し、生体内で起こるウイルス感染動態を包括的に理解し、予測する“ウイルスダイナミクス”の方法論を解説して下さいました。


特別講演
倉田 博之 先生(九州工業大学)
「設計原理に基づく大規模生体分子ネットワークの動力学モデルの開発」

倉田先生は、細胞の代謝・生存などの制御を司る生体分子ネットワークの包括的なシミュレーション解析について発表されました。また、この様な大規模生体分子間ネットワークを数理科学的に解析することで、刺激に対する細胞応答の動的変化(増幅や振動など)を説明できることを紹介されました。


尾山 大明 先生(東京大学)
「高精度プロテオミクスによるシグナル伝達制御機構の数理ネットワーク解析」

尾山先生は細胞内シグナル伝達複合体の構成分子群や、その翻訳後修飾の包括的かつ定量的な解析を通して、生体機能調節機構の理解に取り組んでいます。今回、高感度質量分析技術を用いて細胞内情報伝達のダイナミクスを計測する方法論に加え、蛋白質リン酸化の大規模定量データを用いたネットワーク解析の成果について講演されました。


コーヒーブレイク中でも活発なディスカッションが行われました。

最後に、鈴木先生にシンポジウム全体のまとめをしていただき、場所を白金ホールに移してポスター発表による研究交流会を開催しました。今回は計画班の研究室に所属する若手研究者(若手助教、ポスドク、大学院生など)を中心にポスター16演題が掲示され、研究分野の垣根を越えて活発な意見交換が行われました。

本領域の発足以来、初めての公開シンポジウムにもかかわらず、アカデミアのみならず企業などからも予想を超える100名以上の参加者にお集まりいただき、大盛況のうちにシンポジウムの幕を閉じることが出来ました。ご参加頂き、また、活発に議論して頂いた皆様に改めて深く感謝申し上げます。来年度は公募班も加わり、より多様でアクティブなシンポジウムになると期待しておりますので、是非ともまたご参加くださいますようお願い致します。 今後とも本領域をどうぞよろしくお願い致します。


ポスター会場の様子。分野の垣根を越えて活発な議論が行われました。

このページの先頭へ